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分散型電源の導入拡大に備えた電圧変動対策: インテリジェント サブステーション

ドイツでは再生可能エネルギーを始めとした様々な分散型電源の普及が進んでいる。分散型電源は需要地の近傍に設置されるため、効率的運用による CO2 排出量削減と送配電損失の低減が可能な上、大型の発電設備と比べて建設期間が短くて済むため、需要変動への素早い対応も期待されている。

 しかし、分散型電源は大量に導入すると電力系統の電力潮流および電圧分布の不確実性を増大させてしまうという弱点を持っている。現在、ドイツの分散型電源で発電された電力は従来の系統を通して配電されているが、従来の系統とは元々、集中型電源から供給される電力を一方向に送配電するために設計されたものである。したがって、中圧以下の配電網においては、電圧が自然と降下していくことが想定されている。そこに太陽光発電機や風力発電機などの分散型電源を大量に接続すると、系統の設計段階では想定されていなかった配電系統における電圧上昇及び周波数変動を起きてしまうのである(図1)。

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図1 分散型電源の連系が進むドイツの配電系統における電圧変動
出所: Schneider Electric Energy GmbH

  ドイツの住宅用標準電圧は230V、工業用標準電圧は400Vで、電圧変動許容値は±10%(時間滞在率の目標:95%)と欧州規格EN 50160に規定されている。周波数偏差目標は50±0.5Hz(時間滞在率の目標:95%)と47H-52Hz(時間滞在率の目標:100%)だ。連系される分散型電源が増えるにつれて、電力の品質をこの許容範囲内に保つことが難しくなり、インフラの整っていない地域では停電の原因になっている。電力市場の変化に対応できるような系統、いわゆるスマートグリッドの整備は、「エネルギー転換(Energiewende)」を目指すドイツにおいて急務の課題として認識されつつある。
 系統安定化対策はすでに数多く提案されてきているが、ここではフランスのSchneider Electric社が2013年上旬に発表した「インテリジェント サブステーション(独:Intelligente Ortsnetzstation)」について解説する。
 
 インテリジェント サブステーションとは一言で言えば、リモート制御機能、短絡事故の位置検出、地絡方向の検出、データ伝送などの機能を備えた中・低圧配電網向けの変圧設備である。インテリジェント サブステーションを系統に導入することで、許容電圧変動幅(±10%)を効果的に利用して、最大限の再生可能エネルギー設備を安全に連系させることができる(図2)。

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図2 インテリジェント サブステーションを導入した場合の電圧変動
出所: Schneider Electric Energy GmbH

 インテリジェント サブステーション主に次の6つの装置によって構成されている。

  • 容量630 kVAのタップ調整器付き油入変圧器
  • 中圧ガス絶縁開閉装置 FBX
  • 短絡位置検出装置 Easergy Flair 22D
  • 電力品質監視ユニット PowerLogic PM850(DIN EN 50160)
  • メンテナンスフリー バッテリーと急速充電器を備えた遠隔制御装置Easergy T200L
    遠隔制御装置Easergy T200Lのおかげで、サブステーションは系統の状態を常に監視し、系統運用において調整の必要性を診断することができる。通信インターフェイスを装備しており、現在普及している全ての伝送メディアや通信プロトコルに対応している。
  • 地絡検出機能付き遠隔監視ユニットEasergy Flair 200C

 架空電線路が圧倒的に多い日本とは異なり、地中電線路が主流のドイツでは、柱上変圧器の代わりにサブステーションが全国各地に設置されている。インテリジェント サブステーションの装置は、ドイツで最も普及しているDIN EN 62271-202規格のサブステーション(図3)に全て収まるように設計されている。ほとんどがプラグアンドプレイ型の設備で構成されているため、最小限の配線変更で、多くの既存サブステーションにスタンドアローンな解決策として導入することができるのがこのシステムの最大の強みである。

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図3  DIN EN 62271-202規格のサブステーション
出所: Schneider Electric Energy GmbH, ”Die intelligente Ortsnetzstation, Ein wichtiger Smart Grid-Baustein”

 インテリジェントサブステーションを試験的に導入した配電事業者は、効率性・機能性・コンパクト性を全面的に認めている 。

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図4 中低圧配電システムにおけるインテリジェント サブステーションの位置づけ
出所: Prof. D. Gorgius, Prof. K.-D. Haim, Dipl.-Ing. H. Herzig. “Intelligente Ortsnetzstation”

<出典>

  1. B&W TechComp Handels GmbH. “EN 50160 in Kurzform”
  2. Frank Hofstätter, Thomas Weber, Sebastian Rabanus. “Intelligente Ortsnetzstationen
als Alternative zum Netzausbau”, Etz, Heft 4
  3. IDS GmbH. “Smart Grid, Intelligente Ortsnetzstation”, 2013
  4. Prof. D. Gorgius, Prof. K.-D. Haim, Dipl.-Ing. H. Herzig. “Intelligente Ortsnetzstation”
  5. Schneider Electric Energy GmbH, „Die intelligente Ortsnetzstation, Ein wichtiger Smart Grid-Baustein“
最終変更日時 2014年7月20日5:24 PM