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世界最大級のバイオガス施設の危機?

NAWARO Bioenergie 社は、メクレンブルク=フォアポンメルン州のポーランド国境に近い町ペンクンの近郊に世界最大のバイオガス施設を建設した。

この施設は、約20ヘクタールの土地にそれぞれ500キロワットの設備容量をもつ40のモジュールが建設され、最終的には総設備容量が20メガワットを誇る世界最大のバイオガス施設となる予定であった。この施設のためにNAWARO社をはじめとして約5500の出資者が合計8千万ユーロを投資した。2006年11月には、最初のモジュールが系統に接続され稼働を開始した。2007年の半ばまでには40のモジュール全てが稼働し、大規模バイオガス施設の成功例としてNAWARO社とペンクン (Penkun) の名を刻むはずであった。

Standort

       NAWARO社本社とバイオ施設

問題が起きたのは2009年1月1日に改正再生可能エネルギー法が施行されてからである。改正再生可能エネルギー法の第19条第1項によると、設備がそれぞれ隣接している場合、全体を一つの施設と見なされる。すなわち、ペンクンのバイオガス施設ではそれぞれ500キロワットの設備容量をもつ発酵タンクからなる40のモジュールがあるが、この40のモジュールが一つの大型バイオガス施設を形成することになる。これでは、本来期待されていた再生可能エネルギー法に基づくFIT (固定価格買取) およびボーナス(上乗せ分)の合計額が19セント/キロワット時から11セント/キロワット時に減り、バイオ施設の経営自体が困難に陥るはずだった(注釈の表を参照)。

 

Penkun

        40メガワットのバイオ施設

NAWARO社は、連邦憲法裁判所に改正再生可能エネルギー法が違憲ではないかと訴えたが、棄却された。法的手段による救済の機会を失ったNAWARO社は、2009年秋、オッフェンバッハ市の Doric Asset Finance 社に委託し、政治家へのロビー活動を開始した。ペンクンの施設でもモジュールが4分の1しか稼働していない状態が続いており、同プロジェクトの先行きに不安を抱いていた出資者たちも政治家に陳情を行ない、当該バイオガス施設ならびに数百にのぼる他のバイオガス施設に対する危機と救済を訴えた。

このロビー活動は効を奏し、2009年12月に連邦議会で可決された経済成長加速法の第12条で取り上げられた。この第12条により、改正再生可能エネルギー法の第66条に第1a項として、すでに稼働しているモジュール型のバイオガス施設を救済する規定が追加された。すなわち追加条項では、2009年1月1日以前から稼働しているモジュール型施設に関し、改正再生可能エネルギー法第19条第1項の規定を適用外とする旨定められたのである。

この経済成長加速法の規定によってペンクンのバイオガス施設は救われ、NAWARO社は破産の危機を免れた。

その後、ギュストロー(Güstrow)の町にも大型のバイオ施設が建設されたが、ここでは、ペンクンの施設のように電力を系統に逆潮流するのではなく、バイオガスを精製し、オンスペックのメタンガスとして天然ガス導管に注入している。

 

注釈:

  1. FITは設備容量が150キロワットの場合最高額で、次に 500キロワット、5メガワット、20メガワットと容量が増えていくにつれ低く設定されているため、ペンクンの施設では一つのモジュールを500キロワットにしている。

  2. 原料に家畜の糞尿や景観整備の際に発生した(再生可能)植物を利用した場合には、基本となる買取価格に加えてそれぞれボーナスがつく(表参照)。

  3. Nawaroとは、nachwachsende Rohstoffe (再生可能資源)というドイツ語の略語

  4. 2010年に稼働開始したバイオ施設から生産される電力に適用されるFIT及びその他のボーナス(逓減率はそれぞれ1%)

Tabelle

出典: 

  1. NAWARO Bioenergie AG
  2. Geldgeschenk für Biogas, Die Zeit Online ”Geldgeschenk für Biogas” vom 28.01.2010
  3. Wallstreet Online ”Nawaro AG (Biogas Park Penkun) vor der pleite?”
  4. 改正再生可能エネルギー法第19条 【複数施設からの電力に対する補償】 第1項
  5. 改正再生可能エネルギー法第66条 【経過規定】 第1a項

 

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最終変更日時 2010年5月21日8:54 PM