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フランスが容量市場を設置: ドイツの反応

2015年1月23日、フランスのエネルギー・持続可能開発・エネルギー大臣セゴレーヌ・ロワイヤル氏は、イギリスに次いで、フランスが電力容量市場制度を導入することを発表した。

原子力発電所や再生可能エネルギー利用設備に比べて発電出力を調整しやすい火力発電所は、需給逼迫時に必ず必要となる発電設備である。 しかし、再生可能エネルギーの優先的な買い取りによって、火力発電所の稼働時間は徐々に短くなると共に、欧州市場における電力卸価格低下のあおりを受け、火力発電の経済性は著しく低下している。この度、導入された容量市場システムは、火力発電所の稼働停止の波を食い止め、需要のピーク時も安定的した電力供給を可能にするものである。正確には、2016〜17年の冬以降その効果が発揮される予定とのことである。

フランスでは数年前から容量市場設置に向けて準備が着々と進められてきた。2012年12月に公布された第2012-1405号デクレには、すでに基本となるガイドラインが定められており、今回エネルギー担当大臣が調印したアレテは、このデクレの内容を全面的に認め、採用することを宣言するものだった。

ドイツでは分散型容量市場モデルを推進している連邦水道・エネルギー連合会(BDEW)を始めとして、多くのメディアおよびエネルギー関連団体がフランスの動向を報道しており、関心度が高い。特にBDEWは、フランスにおける容量市場設置を機に、ドイツ国内の議論を再燃させる意気込みを見せている。同団体は、フランスの容量市場がドイツに及ぼす影響について、2014年12月に早くも警戒を呼びかける声明を公開した。これによると、フランスの容量市場はドイツにとって百害あって一利なしのようである:

  • フランスは容量市場制度の導入によって、統計的にはおよそ10年に1度の頻度で到来する大寒波に備える計画であり、計画どおりに行けば、大寒波までの9年間、フランスには自国が必要とする以上の電力を供給できる容量が保持されるため、欧州内電力卸価格は現時点の水準より更に低下し、ドイツの発電所は致命的な痛手を負う。
  • ところが、大寒波が訪れる10年目にドイツがフランスの設備容量を当てに出来るという保証はどこにもない。

BDEWは同声明において、ドイツ政府とフランス政府の直接の対話を強く求めている。電力供給システムの転換は、国内レベルではなく、欧州レベルで取り組むべき課題であるとの共通理解は広く認知されるようになって久しいが、いよいよ国際的な合意形成に向けた枠組みが求められている。

<出典>

  1. ドイツ連邦水道・エネルギー連合会(BDEW)のプレスリリース 2015年1月23日
  2. 電力市場に関するBDEWの声明 2014年12月11日
  3. エネルギー・持続可能開発・エネルギー省のプレスリリース 2015年01月23日
  4. Régles du mécanisme de capacité(フランスにおける容量市場の仕組み)
  5. Décret n° 2012-1405 du 14 décembre 2012 relatif à la contribution des fournisseurs à la sécurité d’approvisionnement en électricité et portant création d’un mécanisme d’obligation de capacité dans le secteur de l’électricité(発電事業者による電力供給の安定性への貢献と電力分野での容量義務メカニズムの導入に関する2012年12月14日の第2012-1405号デクレ
  6. Arrêté du 22 janvier 2015 définissant les règles du mécanisme de capacité et pris en application de l’article 2 du décret n° 2012-1405 du 14 décembre 2012 relatif à la contribution des fournisseurs à la sécurité d’approvisionnement en électricité et portant création d’un mécanisme d’obligation de capacité dans le secteur de l’électricité(2012年12月14日の第2012-1405号デクレ第2条適用のために制定された2015年1月22日のアレテ
最終変更日時 2015年2月23日7:24 PM