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EU新方針、原子力への追い風とドイツへの向かい風

EU 委員会は、域内の原発建設、原発運営への補助金等の支援強化を行う方針を発表した。原発事業者にとって追い風となるこれらの方針は、ドイツのエネルギー転換および世界の電力地図に大きな影響を与えることが予想される。

1. EUの原子力産業に再び追い風が吹く、ブリュッセルは原発回帰へと舵を切る。

 ブリュッセルのEU委員会は、原子力発電も再生可能エネルギーによる発電と同様に、その建設と事業運営において国家による援助を受け易くするべきである、と表明した。今日まで、再生可能エネルギーにのみ、適用されていた補助規定が原子力にも適用されることとなる。EU競争担当委員ホアキン・アルムニア(Joaquín Almunia)氏が発表した新指針の骨子では、原子力エネルギーの利用促進はEUの目標であると明記された。これまで、国が原発建設および運営に対して、支援を行う際にはブリュッセルに詳細な報告書を提出し、EU委員会の認可を待たなくてはならなかった。この調査作業は数ヶ月から1年を要することもあり、迅速な事業運営の妨げとなっていた。今回の新指針によって、これらの手続きの迅速化と国家による支援促進を明記する事による、投資家にとっての法的安全性を確保することが出来るようになるのである。

2.今発表がドイツのエネルギー政策に持つ意味合い

 ドイツ連邦政府はこれらの新方針に対して、即座に反対意見を表明した。しかし、EU 競争法が関係する案件には、加盟国は拒否権を持たないためドイツは難しい局面に晒されている。イギリス、フランス、リトアニア、チェコ政府は、本指針に対して賛成の立場を表明している。英国政府は、南東海岸地域に2機の原子炉を新設する予定で、これらの施設はフランスのアレバ社とEdF社が運営することになっている。この事からも分かるように、英仏企業はEU委員会の新方針から大きな恩恵を受けることが期待できるといえる。此の様に、EU圏内でも利害が割れているのが印象的である。独環境団体は、これら新政策によって、再生可能エネルギーへの転換が暗礁に乗り上げる可能性があるのではないかと懸念している。ドイツは、2010年の福島原子力発電所事故の後、2022年までに原子力エネルギーからの脱却をはかる事を決定し、エネルギー転換を進めてきた。今回の方針通り、原子力発電所の建設および事業運営に対する補助金等のさらなる支援が実現されれば、ドイツ以外の国では積極的に原子力を導入しようとする流れが生まれ、ドイツの再生エネルギー産業に大きな損害を与えるのではないかと、批判的な論調が目立つ。 

3. 結論

 これまでは、再生可能エネルギーの発電事業に対してのみ、特別な補助金規定が存在した。これは、2020年までに必要エネルギーの4分の1の電力を太陽光や風力などの再生可能エネルギーで賄うという目標に基礎を置く政策であった。今回、この再生可能エネルギーと原子力エネルギーが同列におかれ、同様の支援を受けるべきであるとされた。支持者の言説は、その発電工程において二酸化炭素を排出するか否かという点に共通項を見いだし、それらを同一視しているようである。これまで、原子力発電に課されていた資金的、制度的な楔をはらい、攻めの原子力政策への転換をはかると言うのである。これがドイツ、EUそして世界のエネルギー地図にどのような変化を与えることになるのか注視する必要があるだろう。

出典:

1.EuActiv.deの記事
2.Die Welt の記事
3.n-tv の記事

最終変更日時 2013年7月24日1:47 AM