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ドイツ連邦環境省、CCS法案が閣議決定される

州政府も実証プラントに関する意思決定が可能に

ドイツ連邦政府は4月13日、二酸化炭素(CO2)の回収、輸送、貯留技術(CCS)の実証および利用に関する法案を決議した。

これにより、ドイツ国内で実施されるCCS実証プロジェクトが欧州連合(EU)の資金援助を受けられるようになった。

CCSの実証試験については、各州政府の意見が反映されることについても合意に達した。州政府が二酸化炭素の貯留が可能な場所、または不可能な場所について(特に地質学における)専門的な見地から介入することが可能となった。これにより、各地域の状況を考慮に入れることで、CCSに対する受諾の拡大を狙っている。

ノーベルト・レットゲン(Norbert Röttgen)環境相は次のように述べた。「各州の様々な利害関係を考慮した上で合意に達することができた。CCS実証試験を通じて、ドイツは世界的な注目を浴びる気候変動対策技術を将来の技術輸出に活かしていくことができるだろう。法案は実証試験について最も厳しい環境基準で臨むことを求めており、また幅広い市民参加を求めている。今後の大規模利用の実現は、実証試験によってCCS技術の安全性が確認されてから決定される。」

CCS実証試験は、気候保護に関して新たな見地を開き、低炭素型製品に新たな可能性を与えることになる。これは製鉄所や化学プラントなど長期的に炭素排出をゼロにすることが難しい産業を抱えるドイツの実情に特に重要となる。急速に発展するエネルギー技術によるエネルギー効率の改善、また再生可能エネルギーの拡大に関係なく、石炭は今後中長期にわたってドイツまた世界中で電力供給のベースであり続けるとみられている。CCSはこれらの施設からのCO2排出削減に貢献することができる。またバイオマス発電からでる温室効果ガスの削減にも使用可能である。

CCSに関してはドイツ国内でも様々な意見が出ている。それでもCCSを望んでいる地域では、CCS実証実験を促進することは重要である。これらの地域での実証プロジェクトの結果はCCSの気候保護への貢献度、必要な安全性の保証、経済性が明らかになる。しかし、国民の願いに反したCCS技術の導入や試験がされることはない。

そのためドイツ政府は段階的なプロセスの導入を決めた。CCS法案は、まず試験と実証のみを行う。CCS実証プラントの許認可の発行のためには広い市民参加が必要とされる。これによりドイツ政府はこのCCSの技術特性と市民の利害関係が考慮されることを保証する。CCSの大規模な導入は貯留の安全性が十分に証明されてから決定される。連邦政府は2017年に実証の結果を判断し、ドイツ連邦議会に報告書を提出する運びとなる。CCS利用は調査結果が肯定的な場合のみ続けられる。
法案の概要は以下のとおり。

  • 実証目的の貯留の制限:貯留施設は2016年末までに申請が出願されたもので、各施設における貯留量が年間300万トンを超えず、全ての施設の貯蔵量が年間800万トンを超えない場合のみ認可される。
  • 貯留施設の認可:これは事前調査および環境影響評価による計画確定が必要となる。最も厳しい予防基準が適用される。最先端の科学と技術に従って、人間と環境への悪影響に対し予防策が取られなければならない。
  • その他利用の保護:地熱エネルギーやエネルギー貯留などの他の土壌利用には、適切な保護がとられる。これはCCSがその他の地下の使用に関し不利益を及ぼさないことを保証するためのものである。
  • 責任の移譲:EU法によって規定された責任の移譲の必要条件は運営者による長期間の安全証明である。これは実証終了後に国が運営者から未解決の危険を含んだ安全でない貯留施設を引き継ぐリスクを回避するためのものである。
  • 財源の確保:運営者は補填保証金を用いて全体のサイクル(調査から責任の移譲まで)の財源を確保する必要がある。移譲後の対処のために運営者は貯留される最初の1トンからアフターケアまでの資金を用意しなければならない。これは貯留の監視を続け、潜在的リスクに対応するために、責任が移譲された後も十分な資金を確保するためのものである。
  • その他の規則:当該条文改正法は、さらにエネルギー経済法に基づく二酸化炭素搬送パイプラインの設置と運用、連邦イミシオン防護法(大気汚染防止法)に基づいて分離施設の設置を定めている。加えて、全てのCCS施設は、排出権取引法が適用される。

CCS法案は立案と投資の安全性を保証するCO2貯留の試験と実証のための法的枠組みを定める。最も厳しい環境・安全基準の適用、効果的な財務上の保証など恒久的なCCS実証試験に制限を設けることで、技術の導入が段階的に、成果に応じて柔軟に対応し、リスク認識も充分に行った上で行われることを保証する。EUで計画中の12の実証プロジェクトのなかの少なくとも一つがこの法案の下で実現されることを目指している。

この法案は今年の秋に施行されることを目指し議会審議が現在進行中である。

出典:ドイツ連邦環境省プレスリリース No.053/11、2011年4月13日

最終変更日時 2011年5月10日6:47 PM