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再生可能エネルギーの記録的成長が原子力発電を圧迫?

再生可能エネルギーの成長は予測を上回り、現在すでに原子力発電による生産電力の送電網への供給が一時的に不可能な事態が、時々生じている。

ドイツ政府は、現在、Prognos社、ケルン大学エネルギー科学研究所 (Energiewirtschaftliches Institut an der Universität Köln)、経済構造研究協会 (Gesellschaft für Wirtschaftliche Strukturforschung) に、原子力発電所の稼働延長期間を4年、12年、20年、28年とした場合のシナリオ作成を委託している。

これらのシナリオの算定には全負荷相当運転時間 *)がベースとされるということである。

ドイツの原子力発電所の平均全負荷相当運転時間は、現在約8000時間だが、近年減少傾向にある。というのは、系統運用者には風力や太陽光発電電力を、原子力あるいは石炭焚発電所で生産された電気に優先させて買い取る義務があるからである。したがって再生可能エネルギーによる発電量が多ければ多いほど、原子力発電所からの買取電力量は減少する。

こうした影響がどの程度のものかを、ISUSI (Institute for Substainable Solutions and Innovations)が、緑の党のハンス=ヨーゼフ・フェル連邦議会議員の委託に基づき行った。それによれば、ドイツの原子力発電所の平均全負荷相当運転時間は2020年には7663時間、2030年には5855時間となる。

仮に、このような再生可能エネルギーの増加の原子力発電への影響が今回の稼動期間延長に際して考慮されず、全負荷相当運転時間8000時間をベースとして稼動延長が決められた場合、再生可能エネルギーも継続して優先買取されるとすると、原子力発電所は、ISUSIの算定によれば以下に示すように法定の稼動期間よりはるかに長く稼動することになる。

・稼動期間12年延長 → 実際には15年
・稼動期間20年延長 → 実際には28年
・稼動期間28年延長 → 失際には46年(すなわち2067年まで)

ISUSIの計算は、再生可能エネルギーの増加は政府予測以上に迅速に進行するとの想定に立っている。連邦環境省の2009年予測シナリオ(Leitszenario 2009) は2030年の再生可能エネルギー発電量を100 GWと予則しているが、ISUSIは162 GWを想定している。

政府予測は、一部非常に控えめで、風力発電の設置容量は2030年に59.7 GWだが、連邦風力エネルギー連合会 (Bundesverband Windenergie, BWE) の見通しでは、この数値は2020年には達成可能だ。政府は大規模なオフショア風力発計画を推進しており、2030年にはオフショア風力発電施設の総設置容量は25 GWに達するものとBWEは予測する。

太陽光発電に関しては、政府は近年採って来た促進策を最近軌道修正した。連邦環境省の2009年予測シナリオでは、2030年までに太陽電池パネルの総設置容量は28.4 GWとされている。もっとも再生可能エネルギー法改正案作成段階では、政府は2030年までに65 GWの太陽電池パネルが系統接続されるとも書いている。

こうした最新予測をどの程度、原子力発電所稼動期間延長の際に考慮するのかについて、政府は明確な見解を示していない。再生可能エネルギーの増加と、原子力発電所の稼動機関延長とは両立しないということを、政府は理解していない、と緑の党のフェル議員は批判する。

明らかなのは、原子力電力と再生可能電力の競合の激化に対し迅速な措置が必要なことだ。ドイツの送電系統上で両エネルギー間は今日すでに競合関係にある。

2009年12月25日には台風級の低気圧によりドイツの風力発電機がフル稼働した。従来型発電所での迅速な出力低下が不可能だったことから、需要を上回る電力が送電系統に供給された。そのためライプツィッヒ市にある欧州電力取引所では、電力価格がマイナスの価格帯に達した。すなわち電力の買手が一時的に1 MW当たり230ユーロまで儲け、総額1400万ユーロが買手口座に貸方記帳されたのである。

このような電力の過剰供給は最近頻繁で、電力価格がマイナスの価格帯に達した日は、2009年9月から2010年3月初旬までの間で29日に及んだ。

問題は、調整を欠いた政府のエネルギー政策にある。再生可能エネルギーが急速に成長する一方で、送電系統の近代化は遅々としている。送電線、スマートグリッド、そして何よりもエコ電力の受け皿となる蓄電施設が欠如している。この先電力の供給過剰を来たさないためには、系統増設はマクロ経済上必要不可欠だ。

ISUSIの予測は、2007年1年間の風速、風力、日照量などの完全な天候データに基づいている。2030年の天候が2007年同様であり、再生可能エネルギーにより162 GWの電力が生産されるのであれば、原子力や石炭発電による電力が必要な日は何日あることになるのか。結論はこうだ。2030年に、原子力エネルギーが不要だとはいわないが、その需要は大きく低減することになろう。とりわけ、風が強く、日照量の多い日には、原子力発電の完全に停止も、理論上は可能なのである。

*) 全負荷相当運転時間: 当該発電機が1年間で達成した発電量を定格で運転した場合に要する計算上の運転時間

出所:シュピーゲルオンライン2010年4月23日“Boom bei Wind und Solar, Okostrom verdrangt Atomenergie in Rekordzeit“

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2. ドイツにおける原子力発電所の稼働期間を延長した場合の経済的効果

最終変更日時 2010年4月25日7:52 PM